まえがき
2020年における世界のeSports市場の売上は約1,160億円、
2023年には約1,700億円を突破すると予想されており、
ラグビーなど従来のスポーツよりも大きな利益を出している一大産業です。
そんな熱い注目を集める市場で
10年前には想像もされなかったスポンサードや大会賞金によって生計を立てる
プロゲーマーが生まれてきました。
今回の記事ではそんなeスポーツの最前線で活躍している
プロゲーマーの先駆けとなる存在、ウメハラ選手について紹介します。
ウメハラ選手の経歴
<ウメハラ選手の経歴>
本名:梅原 大吾
日本国内ではウメハラの名前で浸透しており、
アメリカではDaigo the Beastのニックネームで有名
生年月日:1981年5月19日(2022時点 41歳)
活動内容:
・ゲーム大会・イベント参加
・ゲームコンサル活動
・メディア取材での広報活動
・講演活動
・執筆監修
日本初のプロゲーマーが生まれるまで
<初期:ゲームセンターに現れた無双の中学生>
姉の誘いでゲームを始め、後にゲームセンターで空前の大ヒットを起こした
スーパーストリートファイターⅡシリーズに出会い、その魅力の虜になります。
その後、ゲーセン通いの結果、才能が開花して後に同シリーズのゲーム開発責任者から
「10年に1人の天才」と言わしめるほどの実力を見せるようになりました。
そしてゲーセンで彼が残した逸話は数知れず。
有名な話で言うと
・ゲーセン286連勝ゲーム機の連勝数がオーバーフローを起こす
※筐体が255連勝までしか表示できず一周回って31連勝と表記された。
・強キックボタンが壊れた筐体で50連勝を達成
など当時のウメハラ選手を知る相手は大会に彼が出る事を知って
エントリーすることを諦める人もいたとか。
まさに当時から才能を認められていたプレイヤーでした。
<才能開花:全国大会(闘劇)、世界大会(EVO)への参戦>
青年になったウメハラ選手は変わらずにゲームへと没頭する生活を送り、
高校卒業後、ファミレスでのバイト等を続けながらゲーム大会へと
繰り出す日々を送っていたそうです。
そして、才能が開花したウメハラ選手の活躍を止めるプレイヤーは現れず、
日本だけでなく世界規模でのゲーム大会に招待されるようになり、
そのタイトルを欲しいままにします。
そして2004年、ウメハラ選手を最も有名にしたエピソード、
アメリカ ラスベガスでの最高峰の大会”EVO”で起きた奇跡
「背水の逆転劇」によって世界的な知名度を確固たるものにしました。
※この当時の映像は2016年には「世界で最も視聴されたビデオゲームの試合」として
ギネス認定されています
リンク:https://www.youtube.com/watch?v=pS5peqApgUA
しかし華々しい格闘ゲームプレイヤーのキャリアを持っていた反面、
当時はプロゲーマーという職業が存在しなかった時代のため、
定収がなく雀荘に勤務してプロの雀士を目指したり、
一時は勝負の世界に疲れて老人ホームでの勤務時代もあったそうです。
<プロゲーマー初期:引退復帰からの世界大会優勝>
一時は格闘ゲームの世界から距離を置いていたウメハラ選手ですが
友人の誘いで同氏がかつてプレイしていたゲームシリーズの最新作
”STREET FIGHTER IV”の稼働を機に、格闘ゲームの世界に復帰。
ブランクもあり、引退説が囁かれていましたが復帰早々、
勝率90%を維持し公式サイトの全国バトルポイントランキングで1位を獲得。
その後、2009年のアメリカでの最高峰の世界大会EVOにて堂々の優勝。
圧倒的なプレイングに見せられた観客からは称賛の嵐を受けました。
この大会優勝をきっかけに定収がないことによる活動への悩みがあったところ
それを知ったアメリカの周辺機器メーカー「Mad Catz」からスポンサー契約の
オファーがあり、2010年に日本人として初めて
プロゲーマーとして活動を開始しました。
そしてプロとなった後もウメハラ選手は数々の魅力的なプレイを披露し、
名勝負メーカーとして彼が出場する対戦カードは世界で注目されるようになりました。
<プロゲーマー現在:業界をけん引する存在へ>
旬が短いといわれる格闘ゲーム業界でウメハラ選手は長期での活躍をしており、
「世界で最も長く賞金を稼ぐプロゲーマー」としてギネス認定を受けており、
現在も研鑽を重ねながら世界各地のゲーム大会に出場して結果を残しています。
また、ゲーム大会出場だけではなく
2016年Twitchにて自身のチャンネル「Daigo the BeasTV」を開設。
自身をプロゲーマーとしての輝く機会を与えてくれたゲーム業界への恩返しとして
格闘ゲームの広報活動とイベント開催を始めました。
またゲームの大会参加の他にも広報活動、開発支援、講演や出版などを
精力的に続けています。
ウメハラ選手が説く、勝つための哲学
どの業界にも一流と言われる人は自分なりの流儀を持っていて
考え方にはいくつかの共通点が見られます。
もちろんゲームとは言えども勝負の世界で頂点に立つ者として
ウメハラ選手は確固たる哲学を持っています。
そんなウメハラ選手が結果を出すこと、そして成果を出し続けるために
意識している事について氏の著書から紹介します。
<ウメハラ流:勝ち続けるための7つの思考法>
出展:勝ち続ける意志力
①前進するためには、変化を恐れてはいけない
ウメハラ選手曰く
失敗に気づいて変化していけば、
必ず以前の自分よりも高い位置に行けることを説いています。
変化を続けていれば、正しいことが見つかる。
また正しくないことが見つかれば、その反対が正しいことだと分かる。
成長というのは、常に変化の中で促進されると言うことを強調しています。
②小さな変化を増やす
ウメハラ選手は意図的に自分の生活に小さな変化を取り入れてみることが
成長を促すための行動だと言います。
小さくても良いから自分の行動を変えられるという体験の積み重ねが
いつでも自分の視野を広げることが出来るという認識になり、
変化を恐れずに成長できるマインドにつながると説いています。
③失敗は行動の指標
失敗するということは行動をしているからだ、とウメハラ選手は
失敗することに対してポジティブな意見を持っています。
格闘ゲームというのは瞬時の判断や相手との読み合いの中で勝つ種目である以上、
試行錯誤の繰り返しが必要です。
そして行動したレスポンスが自分にとって望ましくないということだったなら
次につなげることができる、失敗もまた成功までの1つの過程であるという
歴史上の偉人達も残した言葉にも重なる考え方です。
④考えない努力はダメ
ウメハラ選手は失敗は成功の糧であるという言葉と同時に
思考しない努力は悪であると断言しています。
その理由は若い頃のウメハラ選手はひたすら苦しいことを我慢することのみが
真の努力であると誤解をしていた経験からきています。
論理的な裏付けや確証がないにもかかわらず
自分を痛めつけることが一番の薬になると勘違いしても成長ができなかった経験から
自分なりに論理を組みたて、試して、結果をフィードバックするという流れがなければ
一向に成長はないとウメハラ選手は戒めの言葉を残しています。
⑤正しい努力は自分と会話する
正しい努力というのは必ず長期継続が伴うとウメハラ選手は説いています。
そのためには自分と会話し、「ちょうど良い負荷をかける必要がある」として
甘すぎもせず、厳しすぎることもない、10年続けられるのか?という問いに
YESと応えられるくらいがちょうど良いと言っており、この努力を
継続していくことが成長には不可欠だと言っています。
⑥習慣に縛られるな
変化を恐れないための心構えとして
自分が作ったサイクルに縛られ過ぎないことも大切だとしています。
習慣は大切だが無理に守ろうとしても心理的なストレスとなって
パフォーマンスに影響を及ぼしてしまうと説いています。
メンタル状況が勝敗に大きく影響する世界で勝ち続けているウメハラ選手
だからこそ説得力があることだと言えます。
⑦小さな成長を感じとる
成長し続けるためには自分で自分の成長に気付いてあげることが
とても重要だとウメハラ選手は力説しています。
ウメハラ選手は成長のサイクルを回し続けることが
上達には必須の努力だと言っており、
このサイクルを回せなくなると次第に飽きや変化への恐怖が出てきてしまい、
相手に対策されると勝負に勝てなくなってしまうそうです。
この考え方はウメハラ選手の別の著書:「1日ひとつだけ、強くなる」で
深堀りして解説されています。
あとがき
ゲームの魅力に惹かれ、大好きな事を突き詰めていった結果、
世間から認められ、一躍 格闘ゲーム界のスターとなったウメハラ選手。
本人も「大好きなゲームを職業としてやらせてくれる業界に少しでも恩返しがしたい」
という思いで現在も精力的に広報活動をされているとのこと。
現在ではプロゲーマーという職業の認知度が上がり、
プロライセンス認定やスポンサードを受けるための仕組みが整備されては来ましたが
競合も多いため、誰もが認めるような実績を残し、著名度を獲得することは難しいです。
そんな中、格闘ゲームと言う勝負の世界で活躍し続けているウメハラ選手が
残している言葉の中にはゲームだけではなく、人生の中で成長・成功するために
重要なポイントが含まれていることが分かります。
今回はそんなウメハラ選手の人生に関する名言で締めくくって終わりにします。
これからもウメハラ選手の活躍には目が離せません。
<ウメハラ選手が格闘ゲーム初心者に向けて送った言葉>
どんなに上手そうな人、強い人も
必ず自分の延長線上にいるという事をわかってほしい。
必ず自分が前進した同じ道の先にいるんです。
道は一本だけなんです。
どんな強い人も「どっかでワープをした」とか
「自分だけこっそり違う裏道を通った」とかない。
もちろん才能の差というものはある。人生の残り時間も違う。
でも、その人が通った道は我々でも必ず通ることができる。